(当たりか)
古びた扉を開けば、人の手が入った空間が広がっていた。
掃除が行き届き、蜘蛛の巣や塵一つない階段だ。
さらには壁に備え付けられた蝋燭に火が灯っていた。
(こうも簡単に見つかっていいのか? 罠か……。やはり誘っているみたいだな)
罠だとしても、オデルには階段を降りない選択肢はない。
階段へと足を進めたその時、下から白煙が上ってきた。
(火事? ……違うな)
目の前すら見えなくなるほどの濃い白煙だ。
僅かにそれを吸い込んだ瞬間。
ぐらりと視界が回る。
(ちっ魔法か)
風魔法を使い、階段の下へと白煙を押し戻す。
ぐらぐらと視界が回転する感覚に、腹の底から何かが上ってくる。
しかし、賊にそれを悟られてはならない。
ゆったりと余裕があると見せかけるため、表情を引き締める。
わざとらしくコツコツと靴を鳴らし、自身の存在をアピールしながら降りていく。
白煙の薄れた廊下の先に、見慣れた白髪が見えた。
彼女は床に膝を突き下を向いている。
早く顔が見たくてシルディアを呼んだ。
「やっと見つけた。俺の白百合」