それから16時ぴったりに
川村先生と理緒の
マンツーマンの
レッスンが始まった。

「スパイラルの足をもっと高く!
バックをする時は、
ハの字を交差させて!
空気抵抗を抑えスピードを出すため
身体はひし形に!
顔は横じゃない、後ろを見て!
もっと早くステップに入って!」

川村先生の指導は
日に日に厳しくなっていった。
それでも理緒は幸せだった。

4ヶ月後、理緒は
ノクターンで大会を滑りきった。
もちろん、優勝した。

そんな日々があって
川村コーチとの信頼関係が
強くなっていった。

母親以上に母親をし
お腹が空いている理緒に
おにぎりをくれ

ときどき川村コーチは理緒を
家に招いて夕食を
ご馳走してくれた。

川村先生の作ってくれる
ミートパスタはとても美味しい。
まるで、お店の味だ。

その川村コーチは、
この修堂女子高等学校のOGだった。

この女子高は
フィギュアスケート部があり
理緒は川村コーチの
指導を目指して、
この女子高に入った。

厳格で厳しい校風の
女子高であると聞いていたが
そんなことは、理緒には
どうでも良かった。

成績を上げよう。
部活を頑張ろう。
内申点を上げよう。
そして大学に行こう。

私の父や母と真逆な生活をしよう。
真逆な生き方をすれば、
真逆の人生が待っているはずだ。

理緒は両親を完全に反面教師にした。

そんな理緒が高校で
初めての期末テストで
トップを取るのは当然のことだった。

ある日、担任教師が
職員室に理緒を呼んだ。

この修堂高等学校は
2クラスに分けられ
普通クラスとSPコース、
いわゆる進学コースがあるが

担任教師からは、
2年生からはSPコースに
転入するよう勧められた。

理緒は「精一杯頑張ります」と
担任教師の申し出を喜んだ。

そんな理緒が高校2年で
SPコースに転入できることは
当然だっだ。

1年間ずっと、成績を落とさず
5教科は全てオール5、
学年でも1位から5位の中に
常に入っていた理緒にとって
S Pコースの編入試験など
簡単だった。

スポーツ万能で
フィギュアスケートも大会で優勝し
成績優秀の理緒が
生徒会長に選ばれるのも
必然的な流れだった。

理緒は全てが、輝いていた。
その輝きは、何より
両親に対しての
全精力を使った復讐心からだった。