初めての教授回診から
3ヶ月後、病棟内は
落ち着いてきた。

誠一郎の誠実さも患者に
伝わってきたようだった。

それでも、誠一郎は
気を緩むことはしなかった。

外来に、研究に、論文に学会に
やれることは全てやる所存でいた。

そんなある日、
病棟の廊下で
花音と出会った。

誠一郎は

「こんにちは」

と頭を下げた。

いつも無視して、
目も合わせない花音だが

「ねえ先生、ちょっと来て」

と言って病室に誠一郎を招いた。

そこには、花音が描いた
風景画が完成されていた。

それは美しい、
ひまわりの画だった。

「完成したのですね」

「うん…」

花音は誠一郎を見つめ

「…あの日はごめんね…」

そう、うつむきながら言った。
誠一郎は微笑んだ。

「気にしないでください
あなたの画が完成したのを見れて
私はとても嬉しいです
明日、退院日でしたよね」

「…うん…その前に
謝っておこうと思って…」

花音が少し申し訳なさそうに言った。
誠一郎は、

「今のあなたなら大学にも戻れます
もう大丈夫ですよ、辛くなったら
またここに戻ってきて下さい
まぁ、今のあなたなら大丈夫ですよ」

花音が初めて微笑んだ。

誠一郎は、精神科医をやっていて
本当に良かったと思った
瞬間だったー