あれから時間が経って、
斗帷くんと2人だけになった部屋。
「..................、ん」
声が聞こえて、
斗帷くんのベッドを覗き込むと。
やっと、目を覚ました斗帷くんの顔。
その顔が見えたタイミングで。
「っ、斗帷くん、大丈夫っ!?」
そう言いながら、
斗帷くんの顔を覗き込むと。
「..................はぁー、サイアク、」
目の上に手を乗せて、そう呟いた斗帷くん。
そう言われたけど、そんなことより。
斗帷くんが目を覚ましたことに、
目がうるうるしてしまって...............
「...............っ、ぅ、ごめん、斗帷くん、私、」
気づいたら、そう言葉を発して。
澄にぃに聞いたことを、
ぜんぶ、斗帷くんに話してしまった私。
斗帷くんが貧血になりやすい理由も。
斗帷くんが言った、
『兄貴たちとは違う、』って言った意味も。
元々、タブレットが効きにくいのに。
もう、かなり前から、
タブレットがほとんど効いてなかったことも。
ぜんぶ、ぜんぶ、
斗帷くんに、話してしまった私。
「...............はぁー、ほんと、兄貴余計なこと、」
むくっと起き上がって、
あからさまに頭を抱える斗帷くん。
「............っ、余計、なこと、じゃないもん、」
こんなこと、
斗帷くんに言うのは初めてだから緊張するけど。
でも、やっぱり私は........................
斗帷くんの目見て、ゴクリと唾を飲み込むと。
「っ、私は、斗帷くんなら、あげたい、」
緊張しながら、初めて伝えたその言葉。
その言葉を聞いた斗帷くんは...............
「...........................はっ?」
かなり驚いたような顔で、
ジッと、こっちを見る斗帷くん。
ぅ、や、やっぱり引かれちゃったかな.........?
そう思って.....................
「っ、と、斗帷くんが嫌じゃないなら、
たまにとかでも、いいから、」
〝私の血をあげたい〟って、
そんな気持ちで斗帷くんの目を見た。
すると、斗帷くんは。
「..................ごめん、ちょっと考えさせて、」
そう言うと再び、
ベッドに寝て、背中を向けてしまった............
斗帷くんに会った翌日。
私は普通に学校に来てたけど、
授業の内容なんて覚えてないほど上の空で。
いつの間にかお昼休み。
お弁当は、半分ほど食べたけど。
前半の、
玲良ちゃんの言葉は、
ほとんど聞いてなくって。
「ゆ〜るりん!
昨日、華原くんの様子どうだった?」
「.....................ぅ、う?
えと、ぱ、パパイヤ食べて、」
いつものことだろうと、
反射的に出たのは〝パパイヤ〟
ぅぅ、ほんと、もうネタ切れだよ.........っ。
「華原くんの貧血、ほんとオモロ!」
そう言って笑う玲良ちゃん。
そろそろ疑ってもいいのに.....................
そう思ったところで。
---------ピロン
と、音が鳴ってスマホが震えた。
スマホを確認すると。
メッセージアプリ、LIMEに届いたメッセージ。
【ゆる、放課後、きて】
たったそれだけ送られてきた、
斗帷くんからのメッセージ。
私は...........................
【わかった!】
そう返信して、お気に入りの、
雲モチーフのキャラのスタンプのOK!を送った。
その後の授業中、
うずうずとした気持ちのままで。
時折り、走るのは緊張感。
昨日のこと、斗帷くんから、
〝何か〟言われるのは分かってるから。
だから、授業が終わるとすぐに。
玲良ちゃんに挨拶を済ませて、
風を切って走って、斗帷くんの家へと向かった。
***
斗帷くんの家に行くと、鍵が開いていて。
いくら幼なじみでも、
勝手に入るのはまずいから。
【斗帷くん、玄関前に来たよ!】
と、斗帷くんにメッセージを送ってみると。
【勝手に入って来て、】
って、返信が来たから。
家の中に入って、
斗帷くんの部屋まで来たところ。
----------------コンコン
一応、ノックをしてみると。
「.....................ゆる、入ってきて、」
私を呼ぶ、
弱々しいけど、優しい声が聞こえて。
ドアを開けると、
心なしか、あんまり顔色は良くなくて。
「.....................っ、と、斗帷くん、」
名前を呼びながら、
ベッドに座る斗帷くんのベッドに近づく私。
「..................ゆる、待って、」
〝これ以上近づかないで〟そんな感じで、
手を伸ばして距離を取ろうとする斗帷くん。
そんな斗帷くんに少し傷つきながらも。
「っ、あ、ぅ、ごめん、」
そう謝ってから、
手を伸ばされたその距離のまま座り込む私。
「.....................こっちこそ、ごめん、ゆる、」
弱々しい声でそう言うと。
「..................俺は、ずっとゆるが好き」
床に座り込む私に、
視線を合わせるようにしてそう言った斗帷くん。
「.........っ、な、ぅ、と、斗帷くんっ、」
いきなりされた、
ストレートな〝告白〟にびっくりした私。
だけど、私も気持ちを伝えたくって。
「............っ、私だって、すき、なのに、」
勇気を振り絞って、そう伝えてみたのに。
そんな私に、
あんまり反応しないまま斗帷くんは。
「だから、タブレットはほとんど効かなくて、
............ゆるに気持ち伝えて、貰おうって、
何度もそう考えたことだっていっぱいある」
〝何度も何度も〟考えたって、
そんな顔のまま言葉を繋いだ斗帷くん。
「..................でも、出来なかった、
俺はやっぱり、ゆるが大事だから、貰わない」
斗帷くんから、聞こえたのは、
〝私が大事だから、貰わない〟って言葉。
その言葉が聞こえた瞬間、
私の心はぎゅっと苦しくなって...............
──────ギュッ
と、斗帷くんの手を握って。
「っ、そんなの、大事にしてない、もん、」
そう口に出した私の目はもう、涙でいっぱい。
そんな私を見て........................
「.....................んで、ゆるが泣くわけ、」
困ったような顔をしてそう言う斗帷くん。
「っ、ぅ、だって.........だって............っ、
私は、斗帷くんがいなくなる方がいや、」
目に溢れてた涙は、
いつの間にか頬に流れてて。
その顔のまま、
──────もうどうにでもなれっ‼︎
そんな気持ちで、
──────ギュッと斗帷くんに抱きついた。