吸血鬼の幼なじみは私だけに甘い。



そして、ムスッとしている私に。



「お前、アホだろ。
さっき、クラスのやつら何人か来た」



と言う斗帷くん。



「心配して来た.........ってこと?」

「はぁ............お前、とことんアホだな」



私を何度もアホ呼ばわりする斗帷くんは。



はぁ、ともう一度ため息を漏らすと。



「なんで俺がゴーヤで貧血なんだよ!」



そう言って、私を睨む斗帷くん。



「ぅ、それは、ネタ切れっていうか、」



あの手この手で誤魔化すのが大変な、
私の身にもなって欲しいぐらいなのに.........



「............、もーいい、つか何しに来たわけ?」



逆に斗帷くんの方が呆れた声を出して。



そのまま、目的を聞かれた。




「あっ、それはね、これ!」



私はその言葉と共に。



制服のポケットにしまってた、
澄にぃから貰ってきたタブレットを出した。



そして、
そのまま斗帷くんのベッドの上に乗せると。



「..................ゆる。これ、兄貴から貰った?」



さすが、察しのいい事を言う斗帷くん。



「..................ぅ、うん、」



誤魔化すのは無理だから、素直に頷くと。



「..................はぁーー、また怒られんじゃん、」



自業自得なのに、
めんどくさそーな声を出す斗帷くん。



あんまり、澄にぃみたく、
めんどくさそーにすること少ないから。



むしろ、新鮮な斗帷くん。




........................って、そうじゃなくって!




「澄にぃ、いつも言ってるじゃん、
『......タブレット、切らすとかだめ』って」



〝心配なんだよ?〟って顔で伝えたつもり。



なのに..............................



「...............別にお前に関係ねぇじゃん、」



せっかくタブレット持って来たのに、
恩を仇で返すような斗帷くんの発言。



「でっ、でも私は心配で..................っ!」



そこまで言ったところで、くるりと向きを変えて。



私に背中を向ける斗帷くん。



「...............じゃあ、もう俺に近づかないで、
接近禁止令。ゆるがいるほーが、貧血になる」



そう言われて、
謎の〝接近禁止令〟!?を出されて。



その日は、本当に、
近づくのを許して貰えないままだった。





斗帷くんに、
〝接近禁止令〟!?なるものを出されて1週間。



「.....................はぁ、」

「ゆるりん、今日32回目のため息だよ?」



今はお昼休みで、
目の前に座る、玲良ちゃんからそう言われた。



結局、斗帷くんとは、
〝接近禁止令〟を出されて以来。



全く会っていなくって、
心配で、家に行ってみても。



『会いたくない』と、
言われて追い返される始末。



それに.................................



「華原くん、もう3日だねぇ」



私が頭で思っていたことを、
口に出した玲良ちゃん。



今まで、
斗帷くんとずっと幼なじみとしていたけど。



さすがに、3日も休むことなんてなかったのに。




ここ3日は、保健室以前に、
学校にすら来ていない状況。



澄にぃに聞いても、
現状は会わせて貰えてないし。



どうしたら良いか?って。



全く分からないままで。



ただただ、心配が大きくなるばかり。



「華原くん、なに食べて貧血になったとか、
そーいうレベルじゃなくなっちゃったとか!?」

「...............だと、良いんだけど、」



私が、見て来た斗帷くんや澄にぃに、
3日も休むほどの重大な貧血は見たことがない。



結局、
会うことも出来ないし、何も出来ないまま。



斗帷くんがいない、
3日目のお昼休みは幕を閉じた..................




***



──────放課後。



「.....................ゆる、いる?」



玲良ちゃんと帰ろうとしたそのとき。



教室のドアのふちのところ。



眠たそうにもたれ掛かっている、澄にぃの姿。



「うっそ!ゆるりん!
生徒会長じゃん!知り合い!?」



私と帰ろうとしている玲良ちゃんは、
めちゃくちゃ驚いた顔と声。



「............ぁ、えっと、斗帷くんのお兄さん、」



私がそう答えると。



「確かに、同じ苗字だ.........っ!」



と、腕を組んで納得する玲良ちゃん。



そんな玲良ちゃんの、
反応なんか気にしてないで。



「.....................ゆる、かえろーか、」



教室に勝手に入ってくると。



澄にぃは、
そのまま、私の腕を引っ張って歩き出した。




「.....................ぁ、」

「........................ぅ、」



澄にぃに、腕を引っ張られながら、
目が合ったのはこの前、生徒会室にいた先輩。



確か、澄にぃの彼女だったハズ。



そう思って.................................



「ちょっ、澄にぃ、
先輩と帰るんじゃないの!?」



そう問いかけると。



「...............んー、ちょっと緊急事態」



そう言うと、
〝だから来て?〟そんな顔をした澄にぃ。



澄にぃと、澄にぃの彼女と。



あろうことか、
私の3人で帰り道を歩いた..................




***



学校を出て10分ほど歩いたところ。



たどり着いたのは、私の家.........ではなく。



お隣の、澄にぃと斗帷くんの家の前。



わざわざ一緒に帰る必要あった?と思っていると。



「..................いまね、あいつ、死にかけてるよ」



そう言って、ニコリと笑う澄にぃ。



「.........ぅ、なに、その悪魔的な笑顔‼︎」



笑顔で言うようなことじゃないことを、
笑顔で言う澄にぃに、ついそんな言葉が出た。



「だって、ほんとのことだし?」



〝しゃーないじゃん?〟みたいな顔する澄にぃ。



私だって、ずっと、
斗帷くんの様子が見たかった。



だけど...........................



「ぅ、でも私、接近禁止令、だし、」



私じゃ、どうしようも出来なかったのに。



「........................とりあえず、きて、」



澄にぃに促されるまま、
私たちは、華原家へと足を踏み入れた。




***



「.........で、斗帷。いつまでそうしてるわけ?」



ノックもせずに、
斗帷くんの部屋を開けた、澄にぃのひと言目がそれ。



まず、〝大丈夫?〟とか、
そう言う言葉が先な気もするけど............



そこは、
兄弟の関係だからとやかく言わないでおく。



「..................、兄貴に来てって頼んでない」

「...............うん。僕も頼まれてない」



けど、なんか、
いつになく会話が噛み合ってない兄弟。



「..................だったら、帰れよ、」



全くこっちを見ずに言う斗帷くん。



でも、その声は、
いつになく弱々しくて心配になるほどで。