「よかったね、このみちゃん」


「…うん」


「俺のぶんも楽しんできて」


「…うん」


「でも気をつけてよ?世の中は物騒だから、あんまり遅くなんねえよーに」


「っ…!」



耳元、「迎えいくよ俺」と、私だけに伝えられた。


家の予定はないんだろう。

私と穂乃花ちゃんのふたりだけで楽しめられるように、結多くんが作った優しい嘘。



「んじゃあ、今日も1日頑張ろーぜ娘たち」



眼差しや声だけじゃない。
私のおさげ髪、くるくる触れた結多くん。

そのまま手の甲で頬をサラリと撫でてくれるから、私なりに頬っぺたを寄せてみる。



なんかスキンシップ、前よりも増えてね?
気のせい───?



聞こえる。

そんな一部始終を横目に見ていたクラスメイトたちの声が。



「……おい結多、おまえその手の甲をタッパーで保管するとか言い出すなよ」


「あー、古すぎるわティーチャー。時代はジップロックで揉み込んでそれはもう唐揚げさんなのよ」


「………は?」


「……くそ幸せの結多……」



隅っこクラブ代表な私と、私のことを愛しすぎている結多くんとの、誰にも言えない(結多くんは言いたいと主張)ひみつのお付き合い。


どうやら始まったみたいです。