「ふっ、やっぱ素晴らしいジンメン具合だわ」
またそこに、あの日のふたりだけの絵が完成されていた。
「ここだけじゃなくてもさ、」
「…?」
次に取り出したは、リュックからペンケース。
ボールペンひとつ手にして、左の手のひらに躊躇いなくペンをなぞって私の番。
「まって、くすぐったすぎる、人に描かれるとくすぐってえのなんでだ」
そしてそこにも、少しだけ不恰好な森の可愛すぎるくまさん。
「…ほら、俺たちがいる場所ならどこでだって描けるんだよ」
「……うん」
「ってことを伝えたかったわけじゃなくてですね実際は」
私の涙をそっと拭って、また優しい顔。
困ったように眉を下げた表情のなかに、愛しくて愛しくてたまらないものを見つめる気持ちが見えた。
「本物、ここに居んだよなあ」
と、つぶやいてから。
もうすべてを吹っ切ったように、面倒な手続きはとりあえず後回しにします精神で。