「すみません、本当に申し訳ない。ずっと思い返してたけど微塵も残ってないんですよ脳内に。
失礼ですがお名前だけ教えてもらっても……いや、どうせ覚えてなかったんならまた教えられても意味ないっすよねえ、はははっ」



え…、本当に覚えてないの……?


たとえば私に気をつかって、とか。

過去を思い出したくもないから結多くん自身が無理やり蓋をしているとか。


……ううん、この感じ。


ほんとうの本当に心当たりがないときの人の顔だ……。



「これが興味ないものにはとことん興味ない俺の性格みたいで。おかしいなあ、記憶力は自信あるはずなんですけどねー」


「い、いや、だって、」


「あ、ほら秋の夜長ですし、俺には天使を無事に送り届ける義務がありまして。このみちゃん行くよー」


「えっ、あ…、はい」



大丈夫なのかな……。

結多くん、結果的にまた彼女を盛大な振り方しちゃってない…?