『あー……、結多さあ、ああ見えて暗黒時代を持ってるから』


『すっごい可愛いアイドルな先輩と付き合ってたの、中2のとき』



すっごい可愛いアイドルな先輩。

目の前の女子高生を見てそう思わない人間はたぶん、いない。


1週間という期限つきでお付き合いしたものの、結多くんがバッサリ振ったと噂の……。



「ゆいた~?びっくりしちゃった?あたしもびっくりだよー、まさかこんなところで会えるなんてね」


「…………」


「だからもう気にしてないって!あたしも子供だったし、結多のこと恨んでもないよ?」


「…………」


「むしろ今のあたしとまた仲良く───、ん?なにか?」



結多くんの前。
物理的にも立ち塞がった私。


思い出したくもない過去は、きっと誰にだってある。

無理やり思い出すことなんかダメ。



「えっと…、もう…暗いので、」



ぎゅっと握った、スクールバッグの持ち手。