ブォォォォォォン。
猛スピードで突っ込んで来たとか、私が車道に出ていたとか、ではなく。
単純に私たちのすぐ近くに大きな水溜まりがあって、タイヤに弾いた水しぶきが降りかかりそうだったから。
「……スゴすぎませんか、俺」
「……スゴすぎ…ました」
なんとも器用な動きで、傘ひとつで私を守ってしまった結多くん。
もちろん結多くんの神技は結多くん自身の身体もしっかりガード。
気づけば雨は上がっていた。
「ふふっ、ありがとう結多くん」
「…どーいたしまして?」
どちらが先に吹き出したかなんて、どっちでもいい。
ごめんね、意地っ張りになっちゃって。
初めて結多くんとあそこまでの掛け合いをして、たぶん私は嬉しかったの。
「やっば、もう9時半近い。行こっか」
「…うん」
さっき、このみ、って。
呼び捨て、よびすて、呼び捨て。