そこにはきっと、谷さんにとっての“変わるきっかけ”があったんだろう。

“変わらなきゃいけないきっかけ”が、あったんだろう。



「…なんとなく、ちょっとだけど。俺が過去に傷つけちゃった子に似てんだ、朝比奈さん」



どんなときもサポートしてくれる。


丁寧に教えてくれて、少しでも分からない場所があったら聞いてって。

何度か同じ質問をしてしまったとしても、聞くたびに詳しく説明してくれる。


だからこそ谷さんは私にとって頼れる先輩で、最低なゴミクズ野郎なんかじゃなかった。



「だから何が言いたいかっつーと、俺も朝比奈さんから学んでるとこがあるっつーか……、なんだろ、そんな感じ」



たぶん、たぶんだけれど。

私に“似ている彼女”を重ねて見ることで、谷さん自身が気づかされることがあるのかなって。


不器用ながらにも本当の優しさが与えられたような気がした。