「俺が見た荒井の良いところは、放課後に机を整頓してるとこ。それだけ」
学級委員長としての顔だけを大切にしている、というものをそこだけは感じなかったから。
やっぱこーいう行事はめちゃ大切。
荒井の行動のほとんどは先生からの評価のためとか、そればっかりってことが今日だけで分かった。
「こほっ…、けほっ」
「あ、やばい咳し出してる。…戻るよ委員長。はやくこのみちゃんを休ませてやらねーと」
「……はい」
それから大人しく背後を追いかけてきた荒井。
もう今の俺は無理。
あんなの見ちゃったら最強になれた気さえする。
あんなにも可愛い女の子がいたなら、さすがの俺だって男になるよそりゃあ。
ありがとう森の可愛すぎるくまさん。
「野口は?ぼっち倉田は?あ、途中の自販機で飲み物だけ買っていい?」
いつものように話せば、委員長も同じようにして答えてくれる。
───としても。
恋を失った女の子の顔だけは、隠すことができていなかった。
うん。まあ。
そんなものは知らんけど。