ギッ!と大きな音がしたと思ったら、一人の男が立ち上がっていた。
その男は少女を、目を見開いて指差している。

「待って君あの子じゃん!ほら、下心丸出しのオジサンに持ち帰られそうになってた!」
「?」

「ほら、拾ってって色んな人に言ってたでしょ?」

少女は首を傾げるとゆっくり記憶を思い返す。

そして一つの結論にたどり着いた。
あの男だ、少女が二度目に声をかけたオジサンを蹴飛ばした少し怖い人なのだ。

「俺以外にも声掛けてたのか?」
「ん!03番拾ってもらえ言った」

「ぜろさんばん…?
いや、危ないでしょ!あのままだったら君ヤられてたよ!?」

少女は分かっていないのだろう。
どうして怒られているのかと首を傾げているばかりだ。

「後から言い聞かせておく。
…拾ったのが俺で良かった」

「そうして。夕日も無事でよかった」

男は大人しく自身のソファーに再び座った。

「夕日…。無事で何よりだ」

少女は誰の声だと辺りを見渡すと、どうやら眠っていたライオンが起きたようだ。

「今回は本気(マジ)で死ぬかと思った」
「そんなにか」

男は慣れた様子で空いていたソファーに気だるげに腰を落とす。
他にもソファーが空いていたが、アレは少女のためのものではないのだろう。

考えた結果、少女は若干余裕のある一人用ソファーの男の隣に無理やり詰めた。

「っふ…っ!」

男が声を殺して笑っている。

「ひぁっ!」

ふわりと感じる浮遊感の後、少女は気がつけば男の股の間に収まっていた。
言わずともわかる、男によって持ち上げられたのだ。

「それは?」
「…彼女は夕日が拾ってきました」