村の中の隣人の誰もが、一言もサーシャの話を聞いてくれなかった。数日前まではそこそこ楽しく平和に村で暮らしていたのに、手の平返すとは正にこのことだ。


「何が情け?」


サーシャは誰も話を聞いてくれずに死刑に処されるこの状況に、泣くどころか腹が立ってきた。


「情けないのはアンタよ、ルシテ」


特にこの婚約者には腹が煮えくり返る。


コソ泥精神が抜けなくて怠け者で全然働きもしないで、顔が少々整って見える時がたまにあるのが唯一の長所であるただのろくでなしだ。


こいつの母がどうしてもっていうから婚約して、せっかく婚約者になったのだからそれなりに夫婦になろうと思っていたというのに、もう限界だ。こいつはダメだ。


「婚約者の私がちょっと異端者だからってピヨピヨしちゃって」

「ちょっと異端者って何だよ!」

「話も聞かないで死刑にするなんて、ただのビビリ!」

「び、びびり?!」

「アンタ真っ先に私を死刑にしようって言ったよね!それで私を死刑にしたあとは、俺はなんて可哀想なんだ!って不幸風吹かせてみんなに慰めてもらうの待ってるんでしょ!」


サーシャは薄紅色の瞳に怒りを轟轟燃やして赤みが深まる。婚約者ルシテを指さして言い切ってやった。


「アンタのそういうヘニャッてるとこ大っ嫌いだった!それにアンタのある角度から見ると男前風にみせて、本当は造形崩れて顔が全く好きじゃなかった!」

「顔?!」