サーシャが悲痛な大声を響かせる。


団長が持ち上げた右腕には、

手首から先がなかった。


右腕の先は手の平がなく、丸くなってしまっていた。巨大蜘蛛との戦闘で右手首を失い、ルテが必死に治療したのが情報として読み取れた。団長は悲壮感を出すことなく、いつものように大きく笑う。


「早い撤退とルテのおかげで死者はナシ。これが精一杯の前向きな報告だ、レオ」


務めて明るい声と共に笑う痛々しい団長を見ていられないルテは、サーシャの肩に額を乗せた。サーシャはルテの背を抱き寄せて撫でる。


団長のことだ。きっと団員やルテを守った結果だろうことは聞かなくてもわかった。


「物資は全部置き去りで、戦闘員はほぼやられて……盾魔法は消滅したんだな」

「そういうことだ」

「お疲れ団長」


団長の報告を正確に読み取ったレオナルドは、団長に向かって片手を持ち上げる。団長はレオナルドが上げた手に丸くなった手首を打ち合わせた。