空は厚い雲に覆われている。

 日の出から既に二時間が経過していた。約束の時間はとうに過ぎている。

 ウィリアムはいつものアーサーとの待ち合わせ場所――王宮の敷地をぐるりと取り囲む高い塀から少し離れた大木の下――で、門を出入りする人々を横目で眺めながら独りアーサーを待ち続けていた。
その表情は彼にしては珍しく、苛立ちと焦りを含んでいる。

 ――遅すぎる。何かあったのか?

 ルイスの梟は間違いなくアーサーに手紙を届けたはずだ。それにアーサーが待ち合わせの時間に遅れたことは今までに一度だってない。

 確かに今回はウィリアムからの一方的な誘いであるが、都合が悪ければ誰かに言伝を頼めばいいだけである。けれどそれもない。ということは、アーサーは確かにここに来るつもりであるということ。

 それなのにどうして彼は現れないのだろうか。

 ――やはり、何かあったのか?

 ウィリアムは考えるが、王宮内の様子はいつもと何ら変わりはない。
 結局彼は待ち続けることしかできず、時の経過と共に眉間の皺を深くしていった。