――なぜ?
俺はその問いに、思わず言葉を詰まらせた。
なぜだろうか。いつから俺は自分の力を制御できるようになったのだろうか。
俺は記憶を探ろうとした。けれど、思い出せない。
「……そうだな、ただ、いつの間にかそうなっていた、としか」
「ふーん。そうなんだ」
俺の回答に、昔の自分は不満げに首を傾げた。そして再び自嘲気味に笑う。
「僕も早くそうなりたいなぁ」
それは自らを軽蔑し、嫌悪するような顔で――そのことに、俺はただ驚いた。
――昔の俺はこんなに酷い顔をしていたのか? 俺は、これほどに自分を憎んでいたか?
目の前の自身の卑屈な笑みに、確かに感じる嫌悪感。
少年はそんな俺の心情に気付いたのか、ニヤリと笑みを深くした。
「変な顔。どうしてそんな顔をするの? 君は僕なんだろう? 僕の気持ちを、誰よりもよく知っているはずだよね」
少年の唇が酷く歪む。その瞳が、憎しみを込めて俺を見据えた。
「僕は皆に嫌われてるんだ。この赤い右目のせいで。――でも君は違うみたいだね。ねぇ、どうして? 君は忘れてしまったの? 僕らが周りにどう思われているか、本当に忘れてしまったの?」
少年の穏やかだった口調――それがだんだんと、俺を責め立てるような声に変わっていく。