次の瞬間、わたしは抱きしめられた。
 いつの間にかたくましくなった彼の胸板から……彼の鼓動(こどう)が伝わってくる。

 心地いい。安心する……。けれど――。

「い……痛い、わ」

 彼の腕の力の強さに声を漏らすと、彼はハッとしてわたしの身体を引き離す。

「ごめん、ユリア! つい――抑えられなくて!」

 その焦った顔がおかしくて、嬉しくて、わたしは吹き出した。

「ふふっ」

 すると彼も釣られて笑い出す。

「ははっ、あははははっ!」

 なぁんだ、そうだったのね。わたしたち、本当は両思いだったのね。

 安心したわたしは、先ほどの不安はどこへやら――いたずら心を芽生えさせ、彼の腕を掴んでぐいっと引き寄せる。そうして、彼の頬に口づけた。

「ちょっ、ユリア、何を……」

 彼はパクパクと口を開け、顔を真っ赤に染め上げる。
 その姿が可愛くて、愛しくて、わたしは微笑んだ。

「さっきわたしを不安にさせたお返しよ!」
「――っ、それは……反則だよ」

 彼は顔を赤らめたまま、急に真面目な顔をする。
 そして、わたしの両肩をがしっと掴んだ。

「……え?」

 これは、もしかして……もしかしなくても。

「ちょ……さ、さすがにそれは……わたしたち、まだ子供よ」

 わたしは急に恥ずかしくなって、彼の胸を押し返した。でもびくともしなくて。

 それに――彼の熱を帯びた瞳がわたしの心を捕えて――もう、何も考えられなくなった。

「ユリア……好きだよ。ずっと、僕と一緒にいてほしい」
「……うん」
「あぁ、ユリア――!」

 そしてわたしたちは、そっと唇を重ねた。