「由良ちゃんのそばにいられるなら」
「っ璃、斗く……」
「人間でもヴァンパイアでも構わないんだよ」
そう言って鼻先を寄せてきた璃斗は、有無を言わさず由良の唇を奪う。
初めて触れたそれは、想像よりも遥かに柔らかくて繊細で、
胸がいっぱいになって耐えきれそうにない由良は、固く瞼を閉じた。
璃斗の命を助けたかった。
だけど決して、ヴァンパイアになって欲しかったわけではない。
ましてや由良が好意を自覚したからといって、
璃斗の心も体も繋ぎ止めておきたくなったというわけでもないのに――。
普通の人間だった璃斗をヴァンパイアにしてしまった罪悪感を抱く中、
まさか感謝されるなんて思ってもみなかったから。
(璃斗くんのこと、好きなままでいいってこと……?)
今交わしているキスの意味を由良が探ることになるのは、
もう少し時間が経って冷静さを取り戻す、帰り道の途中だった。