あの地震から一週間が経過した、放課後の生徒会室。
一年生の書記さんと会計くんが、
神妙な面持ちでノートパソコンを使い書類作成していた。
そして空席の副会長デスクを沈黙したまま眺める由良もまた、
ホッチキスで書類を留める作業を繰り返す。
「先週の地震、被害が大きくなくて良かったですよね」
「建物の崩壊も火事もなかったし、人的被害も……あっ!」
しまった!というような表情をした会計くんの肩を、
隣に座る書記さんがバシンと叩いた。
しかし、由良は微動だにせず作業を続けているので、
二人は少しだけホッとする。
そもそも二人の会話は、考え事をしている由良の耳には届いていなかった。
あの日。
あの地震の日の出来事を毎日思い出すし、
思い出す度に不安で胸が押しつぶされそうになる。
(ヴァンパイアらしいことしたの、生まれて初めてだった)
自分がヴァンパイアの末裔であることを忘れるくらいに、
十六年間、平穏に過ごしていたから。