「璃斗くん……璃斗くん!」



 普段はこんな大きな声を出したことのない由良が、必死に璃斗の名前を呼ぶも。
 呼吸は弱まり、意識があるのかないのかもわからない。


 自分のことを守ってくれた彼を助けたい。


 しかし由良の考えるたった一つの救出方法は、
 自分の本来の能力を露わにすることになる。

 そしてそれを受けた璃斗は、由良と同じ運命を背負わせてしまうことにも――。



(でも、でも……!)



 どんなことになっても、生きていてほしい。
 初めて心を開けた人だから、恋をした男の子だから。

 由良の不安が消えたわけではないけれど、ぎゅっと拳を握り覚悟を決めた。



「……璃斗くん。あなたの人生を変えてしまうこと、許して……」



 そう囁いた由良は、ゆっくりと上体を倒していく。

 そして抱き抱える璃斗の首筋、すなわち出血部分に唇を寄せると、
 パクリと咥えて隠し持っていた牙を傷口に突き刺し噛みついた。