集計が終わって生徒会室を後にした二人。
 時刻は夜の七時を少し過ぎていて、全ての教室の電気が消え廊下のみが照らされる。



「静か……」
「もう委員会のみんなも帰っちゃったのかもな」



 足音を響かせながら階段を降りて、もうすぐ生徒玄関に到着するタイミングで、
 突然璃斗が足を止めると、ゆっくり由良へ振り向いた。



「……ごめん」
「璃斗くん?」
「俺、さっき嘘ついたんだ」



 気まずくとも、何とか普通を装ってここまでこれたのに。
 帰り際で神妙な面持ちへと変わった璃斗に、由良も胸がざわついた。

 嘘をついたと言っていたが、一体どの場面の何の言葉に対する“嘘”なのか。
 そして目の前の彼が何故、憂いを帯びた視線を自分に送ってくるのか。



「由良ちゃん、俺本当は……」
「っ……」



 その瞳に吸い寄せられそうになった由良の心臓が、
 高揚の音を鳴らしたその時だった。


 由良と璃斗の足元がぐらりと歪んだと思ったら、突然大きな横揺れに襲われる。



「きゃ、地震⁉︎」
「由良ちゃん!」