璃斗と別れ、一人で見回りをすることになった由良。
 その手には食べかけのチーズハットグが握られたままで、人目も気にせず校内を歩いていた。



「え、生徒会長が食べ歩き?」
「なんか、心ここに在らずって顔してない?」



 高嶺の花で全校生徒の見本でもある由良のそんな姿は、ちょっとした噂になってしまい。
 そして、気づけば生徒会室の前に到着していて、由良自身も驚いた。



「あれ、いつの間に……」



 最後の一口を急いで頬張り、串だけを背中に隠し生徒会室のドアを開ける。

 すると、書記さんと会計くんはまだ見回りから戻ってきていないようで、
 誰もいない室内は静けさに包まれていた。

 安心した由良は、串をゴミ箱に捨てて生徒会長の席に腰を下ろす。


 ふうと長いため息をついたのち、視線を落として考えてしまうのは――。
 サエという女の子が璃斗のことを好きで、璃斗は今その子と一緒に校内を回っているという事実。



(モテるって聞いてたし、あの璃斗くんがモテない方がおかしいし……)