「璃斗、強引に連れ出してごめん」
「あ、いや別に大丈夫だよ……」
「城之木さんにも悪いことしちゃったかな」



 璃斗も、由良に残りの仕事を任せてしまったことは悪いと思っていたが、
 サエが自分を連れ出したことに対しては、由良はきっと何も感じていないだろうから。

 心に傷を負いながらも「それも大丈夫」とサエを安心させる言葉をかけた。


 そんな中で、何の前触れもなく突然。



「ごめんー、ちょっとトイレ行ってくるー」
「は? ちょ、ミク?」



 そう言ってそそくさと退散したミクは、
 わざとらしく璃斗とサエが二人きりになるシチュエーションを作る。

 すると中庭を抜けて賑わう校舎に入る手前で、サエが小さく呟いた。



「璃斗、私……」
「ん?」
「今日、どうしてもしておきたい大事な話があって……」



 顔を真っ赤にしながら、潤んだ瞳で訴えるサエ。

 璃斗はすぐにそれが、何度もされた経験のある「告白」だとわかって、
 悲しげに視線を伏せた。

 自分にはまだできない、好きな人への告白。
 それをできてしまうサエが少しだけ、羨ましく思った。

 だけど――。



「ごめん」



 告白できなくてもいい、
 それでもそばにいたい人が璃斗にはいるから。