「っ……ミクとサエ、どうしたの?」
「この前言ったじゃん、一緒に校内回ろうって」
「え、でも俺生徒会の仕事で忙しいって伝え――」
「えー? じゃあ今は何してたのよ?」



 納得のいかない表情で腕を組んだミクは、ベンチに座る生徒会役員二人の手元を見る。

 生徒会長である由良と、副会長の璃斗の手にはしっかりと食べかけのチーズハットグが握られていて。
 仕事で忙しいという説得力を見事に欠いた。

 すると、大人しく様子を窺っていたサエも、由良を見て不安そうに声をかけてくる。



「璃斗と城之木さんは……その」
「え?」
「付き合ってるの?」



 その言葉に動揺した璃斗は、頬を染めて口を結んだ。
 すぐに否定するべきなのはわかっているのに、
 本心はそうなりたいと願っているから否定したくない。

 そんな自己中心的思考が働いて、返答できずにいると。



「……付き合ってないから、安心して」



 サエの抱く不安がわかっていた由良が、小さな声でそう呟いた。

 想いを寄せる男の子が他の女の子(由良)と一緒にいるところを目撃したら、
 誰だって大きな不安に襲われる。

 だからここは正直に、早急に答えるべきだと思って出た言葉。


 しかし、由良は返答したことで現実を突きつけられてしまった璃斗は、
 グッと感情を押し殺して無理矢理いつもの笑顔を作る。