「今度いつでも食べられるお店連れて行ってあげるよ」
「え?」
「あ! いや、ごめん。教えてあげる……」
連れて行ってあげるなんて、それはもうデートのお誘いのようにも捉えられてしまう。
そう思って慌てて訂正した璃斗が、なんとなく謝ってしまった時。
今頃困っているであろう由良からは、意外な言葉が返ってくる。
「……一緒に、行こうよ」
「由良ちゃん?」
「璃斗くんが、嫌じゃなければ……」
俯きがちにそう呟く由良の耳は、微かに赤く染まっていて。
それだけで返事の意味合いが変わってくるから、璃斗の心臓が慌ただしく音を鳴らした。
由良も一緒に行くことを望んでいる。
そう感じてしまい、秘密にしていた想いが溢れ出てきて制御が難しくなった。
「ゆ、由良ちゃんっ」
だから、璃斗がつい口走りそうになったその時――。
「あ! 璃斗はっけーん!」
「っ⁉︎」
二人きりだった中庭に突然、
親しげに璃斗の名前を呼ぶ二人の女子生徒が姿を現した。
一人は積極的に璃斗へ話しかけている中、
もう一人は少し恥じらっていて頬を染めていたから。
由良は直感的に、彼女が璃斗に恋をしているんだと予想できてしまった。