「チーズハットグ……」
「ああ、チーズが伸びるアレ!」
「私見たことも食べたこともなくて、だから」
「それで食べたかったんだね」
「なんだか子供みたいでごめん……」
高校生にもなってこんな理由、と恥ずかしさが込み上げる。
でも、そんな由良を前に璃斗は最大の嬉しい気持ちを放って言った。
「そんなことないよ、話してくれてありがとう」
「っ……」
「じゃあ早速行こう、売り切れたら大変」
無邪気な笑顔を咲かせて歩き出した璃斗に、温かい心を抱きながらついていく由良。
璃斗の優しさに触れるようになってから、
自分の中で様々なものが変化していると理解していた。
他人と距離をとっていたのが嘘のように、今は完全に璃斗へ心を許している。
そして、璃斗が嬉しそうに微笑んでいるのを見ると、同じように嬉しい気持ちになるのは。
心臓がドキドキと音を鳴らすのは――。
(これは、恋……?)
初めて抱いた感情とそれを表す言葉に戸惑いながらも、今は平常心で璃斗と共に歩く。
ヴァンパイアの末裔である自分が、普通の人間に恋なんて。
そう認めてしまうのが、今は怖いから。