「……気になる女の子が、いるんだ」
「え?」
「でもその子は、俺のことを知らないから……」



 そう言ってゆっくりと視線を動かした璃斗。
 その瞳に映るのは、その“気になる女の子”の驚いた表情。



「まさか副会長になったのは、今より更に目立つためってこと?」
「あ、いや、まあ……」



 正確には由良に自分の存在を知ってもらい、あわよくば親交を深めたい璃斗。

 そして心に抱いている想いがはっきりとした恋に変化して、
 止まらないくらいに由良に夢中になれたら良いのだけれど。

 今の由良には、少し違った解釈をされてしまった。



「下心で副会長になったのね」
「うっ、それはちょっと語弊が……」
「しっかり仕事してくれるなら動機は何でも良いけど」



 呆れているのか、それとも本当に興味がないのか――。

 これ以上詮索されないようなあっさりした返事に、
 璃斗は寂しく思うも話題終了には少しだけ安心した。



「気になる女の子、璃斗くんに気づいてくれたらいいね」
「っ……うん」



 由良が本気でそう願ってくれるなら、今すぐ本音を伝えてしまいたかった璃斗だけど。

 今の二人の関係のもと告白したところで、玉砕するのは目に見えていたから。
 本音はぐっと飲み込むことにした。