「私、誰かとこんなに会話したことないし不要だと思っていたの」
「え?」
「でも、璃斗くんとの会話は楽しいなって」
「っ……そ、そう?」
「うん、だから璃斗くんが副会長になってくれて良かった」
今のが、由良の無自覚での発言だってことは重々承知していた。
だけどその言葉一つ一つは、璃斗にとって重要な意味を持つ。
「……俺も、由良ちゃんが生徒会長で良かったよ」
簡単に喜びにも落胆にもなることを、この時の由良はまだ知る由もないまま。
十五分ほど歩き続けた。
二人の足音だけが響く夜の住宅街。
会話が途切れて無言になっても、どこか心地よさを感じていた由良は。
もうすぐ自宅に到着するというのに、つい話題を振ってしまった。
「そういえば、璃斗くんはどうして副会長に立候補したの?」
「え! な、なんで?」
「なんとなく、不思議に思って」
「っ……」
由良の質問にドキリと心臓が跳ねた璃斗は、少しだけ考えた素振りを見せた後。
大きく息を吐いて前を見据えると、その答えを小さく呟いた。