「由良ちゃん一人で帰らせて、万が一何かあったら俺……一生後悔する」
「そ、そんな大袈裟な」
「大袈裟だとしても俺が耐えられないから、お願い!」



 璃斗は目の前でパン!と両手を合わせ、由良に頼み込む。

 呆気に取られた表情のまま、しばし固まる由良は、
 何故彼が他人に対してここまで一生懸命になれるのかがわからなかった。

 だけど、そんなふうに思ってくれる気持ちや真っ直ぐな心は本物だと伝わったから。
 璃斗に少しだけ興味が湧いて、つい笑い声を漏らしてしまった。



「え、由良ちゃん今笑った?」
「は! ご、ごめんなさい……」
「笑えるところあった?」
「うん、だって璃斗くん必死なんだもん……」



 思いもよらない笑顔という収穫に、璃斗は驚きながらも嬉しそうに顔を緩ませる。
 少しだけ、由良との心の距離を縮められた気がして、
 ほんのりと頬を赤らめながら、だけどバレないように駅払いで誤魔化した。

 そして、由良の中のその感情を生み出したのが他でもない。
 璃斗(自分)なんだと思うと、感動さえ込み上げる。