「私たち、生徒会関連以外で関わることないし、そもそも仲良くないし」
「え?」
「私もそういうの興味ないから、そのうち周りも諦めると思うよ」
「……うん、そうだね」
何気ない一言に少しだけ視線を落とした璃斗は、
無理矢理笑顔を浮かべたあと明るく返事をした。
初めから、由良が他人に興味がないことは何となくわかっていたのに、
それでも生徒会役員の副会長に立候補した璃斗の思惑。
同じ学年の高嶺の花で有名な城之木由良が、会長として立候補していたから。
わずかな望みをかけて、小さなチャンスを逃したくなくて。
少しでも由良のことを知りたくて、自分のことを知って欲しくて。
今生徒会の一員としてここに立つ。
(まだ始まったばかりだもんなー)
真正面からぶつかっていけないところは、我ながらダサいと思うけれど。
現時点で由良に秘めた想いを打ち明ける行為は、
花束を持たずに初対面の人に告白するようなものだから。
今はまだ、この気持ちは悟られてはいけないと考える璃斗が、
軽く伸びをして由良に微笑みかけた。
「さてと、俺たちも帰ろっか!」
「うん、遅くなっちゃったね」
「家まで送るよ」
「璃斗くん電車でしょ? 逆方向だし一人で帰れるから」
「でも……」
心配そうに眉を下げた璃斗だが、お構いなしの由良は生徒会室を出ていく。
その淡々とした態度は、誰に対しても同じであることは確認済みで、
距離を縮めるのも一筋縄ではいきそうもないなと、璃斗は心の中で思った。