「じゃあ、お先に失礼しまーす」



 一年生の二人を先に下校させた由良と璃斗。
 生徒会室の整頓だけして、二人も直ぐに帰る予定だった。

 だけど、先ほどの書記さんの話を聞いた後だから、
 由良は少しだけ気まずさを感じていて……。



(はあ、これからどんな顔して話せばいいのか……)



 璃斗が人気者だろうと、どんなにモテようとモテまいと。
 由良には関係ないことであって、特別仲良くなる予定もない。
 ましてや恋をするなんてもってのほか――。



「本当、困っちゃうよな」
「っえ⁉︎」
「好き勝手言うからさ、周りのみんなは」



 大抵のことは寛大な心で許してくれそうな印象の璃斗も、
 先ほどの話には困っている表情を浮かべていた。

 そんなことは当たり前で、万が一彼に想い人がいたとしたら。
 自分との変な妄想を、赤の他人にされるのは良い気分ではないだろう。

 他人と一定の距離を保つ由良にとっても、その気持ちはよく理解できたから――。
 共感する意味も込めて、断定的な言葉を発した。