「あ、朱里ちゃん、おはよう」

「おはよう、白都くん」


 教室に入る手前で、クラスメイトの中眞(なかま)白都(はくと)くんに声をかけられた。

 色白で、手足もすらっと長くてとってもキレイな男の子。


 彼もね、実はヴァンパイアなの。

 わたしと同じく図書室で本を読むのが好きみたいで、それがきっかけで仲よくなったんだ。

 でも、本の話題だけじゃなく、悩みを共有できるっていうのも、ちょっとうれしいんだよね。

 今日の日差しキツイよね、とか。

 今日の学食のメニュー、ニンニクが入ってるらしいけど大丈夫? とか。


「今日の放課後、僕、図書委員の当番なんだけど、よかったら図書室に遊びにこない? 朱里ちゃんにオススメしたい本を見つけたんだ」

「そうなの? じゃあ、行こうかな。あ、でもわたし今日そうじ当番だから、ちょっと遅れていくね」

「うん、わかった。じゃあ、先に行って待ってるよ」


 おしゃべりしながら白都くんと一緒に教室に入ろうとしたんだけど、なんだか強い視線を感じて、わたしはその場で足を止めた。


 B組の教室の前から、じっとこちらの様子をうかがっているのは……東条くん?


「どうしたの? 朱里ちゃん」


 白都くんが、足を止めてわたしの方を振り返る。


「う、ううん、なんでもないよ」


 ふるふると首を横に振ると、東条くんの方を見ないようにして、わたしも教室の中へと入っていった。