実はね、この子もヴァンパイアなの。

 名前は、北澤(きたざわ)莉愛(りあ)ちゃん。

 見た目だけじゃ人間と見分けはつかないんだけど、仲間意識っていうのかなあ?

 お互いなんとなくわかっちゃうんだよね。

 それで、入学式の日に、こそっと声をかけられたの。

「あたしもなんだ。よろしくね」って。

 今までお母さん以外のヴァンパイアに会ったことがなかったから、あのときはうれしかったな。


「へぇ、さすが蒼空くん。誰にでも優しいんだから。でもぉ、あたしはあたしにだけ優しくしてくれたらうれしいな」


 今朝の話を聞いた莉愛ちゃんが、ヤキモチを妬いているみたいに、口を尖らせる。


 莉愛ちゃん、ひょっとして東条くんのことが好きなのかなぁ?

 いや、それだけじゃなく、ひょっとしたら二人はもう『契約』をしているのかもしれない。

 二人の親しげな話し声が、なんだか遠くに聞こえる。


 わたしは、そのままなにも言わずに自分の教室へと向かった。