自分の教室に行く前に、お隣のB組に寄り道する。

 命の恩人に、ちゃんとお礼を言っておかなくちゃと思って。


 えーっと……東条くんって、どの子だろ?

 意識が朦朧としていたし、逆光だったから、顔が全然わからない。


「あのっ」


 登校してきたばかりの女の子の背中に、おもいきって声をかける。


「なに?」

「えと……東条くん、いますか?」

「東条くん?」


 教室の中をキョロキョロ見回して探してくれているけど、見つからないみたい。


「あれー、いないなあ」

「お、西宮。元気んなった?」


 うしろから突然男子に声をかけられ、びくんっと肩が跳ねる。


「ああ、いたいた。この人が東条くんだよ」


 女の子が、今声をかけてきた男の子——東条くんを紹介してくれた。


「なんかこの子、東条くんに用があるみたい」

「そっか、さんきゅー」


 女の子が教室に入っていくのを見送ると、東条くんがわたしの方を見た。