「あのっ、誰ですか⁉ わたしをここに連れてきてくれた人」


 そんなはずないって、頭の片隅ではわかってる。

 けど、思わず期待で前のめりになってしまう。


「1年B組の東条(とうじょう)蒼空(そら)くんよ」

「そう……ですか」


 沈んだ声でそう返すと、思わずため息をつきそうになった。


 いったいなにを期待していたんだろ、わたし。


 1年B組の東条蒼空くん……。

 知らない。はじめて聞いた名前だ。

 そうだよね。南くんのわけないじゃない。

 だって、11年前のあのわたしの誕生日の翌日、南くんは、わたしのことが怖くて、お隣からいなくなっちゃったんだから。