朱里の五歳の誕生日の夜。

 僕の部屋の真ん中で二人で笑いあったあと、しばらくの間もじもじしていた朱里が、「あのね、南くん」って、遠慮がちに僕に呼びかけた。


「うん? なあに?」

「あのね……」


 なんだかすごく言いにくそうにしている。


 あ、ひょっとして——。


「朱里、僕の血がほしいの?」


 僕がそう尋ねると、朱里はぶんぶんと全力で首を横に振った。


「じゃあ、なあに? ちゃんと言って?」

「あ、あのね……南くんとずーっと一緒にいられるおまじない、してもいい?」

「ずーっと一緒にいられるおまじない?」


 僕が首をかしげながら聞き返すと、朱里がこくりと小さくうなずく。


「あのね、朱里のお父さんとお母さんもしたんだって。だからね……」


『ずーっと一緒にいられるおまじない』っていうのは、今思うとちょっと違ったかなって思う。

 だけど、朱里はそう願ってくれていたってことなのかな。

 僕とずっと一緒にいたいって。