「あー、でも、もう南くんは卒業したいかも」

「へ⁉」

「で? これからはなんて呼んでくれるの?」 

「……と」

「『と』?」

「……東条くんっ」

「えーっ、まだそっち?」


 わざと拗ねたように口を尖らせる。


 うぅっ……。もうこうなったら絶対呼ばないと許してもらえない気がする。


「…………蒼空くんっ」

「うん、そっちがいい」


 わたしがおもいきって蒼空くんの名前を呼ぶと、蒼空くんは今までに見たことがないくらいうれしそうな笑みを浮かべた。


「あー、マジでサッカーがんばってよかったー! 他にもいくつか特待生の話は来てたんだけど、でもまさか星都学園からも来るとはさすがに思ってなかったからなー」

「それって……わたしに会うために、この学校を選んだってこと?」

「それ以外の理由なんてあるわけないだろ。……まあ正直に言うと、小さい頃からここでプレイするのに憧れてたってのはあったんだけどさ。だって、星都学園のサッカー部っていったら、俺にとっちゃヒーローみたいなもんだったから。でも、いつかこの街に戻ってきて、朱里に会いにいこうと思ってたってのも本当。だから、このチャンスを絶対に逃すわけにいかないって思ったんだ」


 蒼空くんが、すごく真剣な顔で見つめてくる。