「もう二度と会えないと思ってた」

「ごめん。なにも言わずにいなくなって。……あの日、俺、泣かずに『さよなら』を言う自信がどうしてもなくてさ。って、そんなとこで5歳のガキがカッコつけてどーすんだって話だけど」


 それって、南くんも、離れたくないって思ってくれてたってことだよね?

 わたしだけじゃなかったってことだよね?


 そのことが、なによりもうれしい。


「けど、これがあれば、いつかきっと会えるって。それだけが、ずっと俺の心の支えだった」


 そう言いながら、首筋の『契約の証』をもう一度わたしに見せてくれた。


 そういえば、わたし、いったいなんて言って南くんに契約をお願いしたんだろう?

 思い出したいような……恥ずかしすぎて思い出したくないような。


 ……いやこれ絶対間違いなく恥ずかしいやつだ!


 わたしがかぁっと熱を持った頬を両手で覆うと、「隠さないで、ちゃんと見せてよ」なんて言いながら、南くんがわたしの顔を覗き込んでくる。


「みっ、見ないで」

「やーだ。『契約』のことを思い出して恥ずかしがってるんでしょ? だったら、俺にも見る権利あると思うんだけど?」


 み、南くん、さっきまでと雰囲気がちがう気がするんですけど?


「ずっと我慢してたんだからな。朱里の『南くん』だって名乗るの。だって、さすがにカッコ悪すぎだろ? 本気で俺のこと忘れられてたら」

「そんなこと! 絶対に忘れるわけないよ!」

「うん、ならよかった」


 わたしがぶんぶんと首を横に振りながらそう言うと、南くんがふふっと笑う。