「……あースッキリした‼ もう勝手にすればいーじゃん。あたしはあたしでもっともっともーっとステキな彼氏を見つけて……朱里たちみたいに、ずっとずっとずーっと一緒にいるんだから‼ わかった⁉」

「うん。わかったよ」

「わかったんならいいっ! じゃあね!」


 おっきな声で散々わめいたあと、莉愛ちゃんは怒りをまき散らしながら、その場を去っていった。


「さて。ちょっと莉愛のフォローでもしてくるかな。これでも一応莉愛の幼なじみなんでね」


 パンパンッと体についた砂や葉っぱを軽く払いながら、ゆっくりと立ちあがる白都くん。


「白都くん。あの……さっきはありがとう。莉愛ちゃんのこと、止めてくれて」

「いや。僕の方こそ、ごめんね。イヤな思い、いろいろさせちゃって」

「ううん」


 白都くんが校舎裏からいなくなると、あたりが急にしんと静まり返った。


 南くんが、わたしの目の前にいる。

 すごくうれしいのに……久しぶりすぎて、なにをしゃべったらいいのか全然わからないよ。


「本当に……南くんなの?」

「今は、東条だけどな。東条蒼空。南は、親が離婚する前の苗字。久しぶりに呼ばれたわー。『南くん』って」

「ご、ごめんなさい! わたし、今まですごい勘ちがいしてた。『南くん』って、名前だと思ってたの。だから、東条蒼空くんは南くんじゃないって……」

「だと思ったわ。だって、朱里はずーっと『南くん』だったもんな」


 そう言って、ははっとおもしろそうに笑う。


 そのあどけない笑顔が、たしかにわたしの知ってる南くんの面影とぴったり重なった。


 うん。やっぱり、本物の南くんだ。