「もう……絶対に離してやらないからな」


 南くん……震えてる……?


「南くん…………南くん、南くん……ずっと会いたかった……!」


 南くんの背中に両腕を回すと、わたしの両目からボロボロと涙がこぼれ落ちた。


「ねえ、朱里はなぜ人間がいいの?」


 しばらくすると、白都くんが弱々しい声でわたしに尋ねてきた。

 そっと南くんから離れると、白都くんの方を見る。


「人間だからとか、ヴァンパイアだからとかじゃないの。わたしは、南くんのことが好きだから。弱いわたしも、ヴァンパイアなわたしも、全部受け止めてくれる南くんのことが好きなの」

「あたしはこんなの認めない!」


 莉愛ちゃんが、さっと空中をなでるように手を動かすと、またあの空気の矢が空中にいくつも現れた。


「もう諦めよ、莉愛」

「白都は邪魔しないで」


 静かに諭すように言う白都くんに、駄々をこねるように莉愛ちゃんが言い返す。


「そんなことをしても、相手に嫌われるだけだよ。本当に愛しているのなら……その相手の幸せを一番に考えるべきなんじゃないのかな」

「白都くん……」


 白都くんが、見たこともないような穏やかな表情で莉愛ちゃんを見つめている。


「なんなの⁉ 白都まで結局朱里の味方するんだ。……なんなのよ……もうっ‼」


 莉愛ちゃんがばっと手を振りおろすと、空を切り裂くようにしていくつもの矢が飛んでくる。

 だけど、わたしたちにはかすりもせず、あっちこっちの木の幹に突き刺さって、そのまま消滅した。


 莉愛……ちゃん?