「南くん⁉ ねえ、南くんってば」

「だいじょぶ……。ちょっとこのまま休めば……だいじょぶだから」


 莉愛ちゃんから受けた傷がひどくて、きっと無意識のうちに南くんの血を飲みすぎちゃったんだ。


「ごめんなさい。わたしと『契約』なんかしたから……全部わたしのせいだ」


 ぐったりしたままの南くんを、ぎゅっと抱きしめる。


「しょせん人間とヴァンパイアは需要と供給の関係にすぎないんだよ。いくら対等になろうとしたって、そんなことは絶対に叶わない。わかったら、僕のところへおいで、朱里」


 いつの間に現れたのか、すぐそばに笑顔の白都くんが立って、わたしに向かって手を差し伸べていた。


「わたしは、白都くんのものには絶対ならない」


 南くんをかばうようにして、それを拒否する。


「こんな弱い生き物の、いったいどこがいいの?」


 笑顔の白都くんが、ぐったりしたままの南くんの一番大事な足を踏みつけようとする。


「ダメーっ‼ それだけはやめて!」


 体の中が、怒りで煮えたぎっているみたい。


 楽しそうにサッカーボールを追いかける南くんが大好き。

 小さい頃から変わらない、あの笑顔が大好き。


 だから……南くんの笑顔は、誰にも奪わせない!