はぁ、はぁ、はぁ……。


 まだ5月半ばのはずなのに、朝から太陽がギラギラ輝いてる。


 朝、ちゃんとお薬を飲んできたはずなのに、やっぱり強い日差しはニガテ。

 頭がクラクラしてきて、冷や汗が背中を流れ落ちていく。

 なんとか学校までは辿り着けた。

 けど、これ以上は……ムリ。


 校門を入ってすぐのところに木陰を見つけ、よろよろと近づいていく。


「君、大丈夫?」


 木陰にしゃがみ込んだわたしに気付いた誰かが、心配そうに声をかけてくれた。

 ゆるゆるとうしろを振り向きながら、声の主の顔を見あげると、「え……西宮?」と戸惑ったような声。


 誰? 知ってる人?


 逆光で、顔がよく見えない——はずなのに、その人を見あげた瞬間、なぜだか体中の血がぐるんぐるんって暴れ回るような感じがした。


 わたし……この人、知ってる……?


 薄れていく意識の中、必死に助けを求めるようにして伸ばした手を、その人がしっかりと握りしめてくれて。


 あれ……ヘンなの。なんだかふわふわ空を飛んでいるみたい。


 しばらくすると、耳元でなにかを囁かれ——すーっと体が楽になっていった。