坂の下にある駅までの道を、黙ったまま早足で下っていく。


「あのっ……東条くん」

「なに?」


 返事をしながらも東条くんは速度を緩めず、前を向いたままずんずん進んでいく。


「ごめんなさい。東条くんがせっかく止めてくれたのに、わたし、言うことを聞かなくて」

「別に。そのことについては、しょうがないって思ってるから。……だいたい、ここまでのことは、さすがに俺だって想定してなかったし」


 ぶっきらぼうな言い方だけど、わたしの手を握る東条くんの手に、ぎゅっと力がこもる。


 わたしのことをすごく心配してくれていたっていうのが、手から伝わってくるみたい。

 でも、どうしてそこまでわたしのことを心配してくれるんだろう。


 あの朝、木陰でうずくまるわたしを助けてくれた、ただそれだけの関係のはずなのに。