胸元を握りしめ、ぎゅっと目をつぶっていたら、「朱里」とまた名前を呼ばれた。

 ハッとして東条くんの方を見ると、『ちゃんと言って』って目が言っている。


「……ここから……出たい」

「って朱里は言ってるけど? どーすんの、中眞?」

「朱里、怖がらせてごめん。ねえ、僕のそばにいてよ。どうしたら僕のそばにいてくれるの?」


 白都くんが、今にも泣きそうな表情で、わたしにすがりつくようにして言う。


「……ごめんなさい、白都くん」


 目を伏せてわたしが謝ると、白都くんは無言で玄関ドアを開けてくれた。


 リビングの窓の方から玄関へと回り込んできた東条くんに「帰るぞ」と言われ、こくりと小さくうなずくと、東条くんはわたしの手を取ってずんずん歩きだした。