***


「ふわっ……! と、東条くん⁉」


 その日の放課後。校門を出ようとしたところで、東条くんに無言でぐいっと右腕を掴まれ、びっくりしすぎて思わずヘンな声が漏れちゃった。


「な、なに?」

「あのさ……」


 そう言って、目を泳がせる東条くん。


「あの……ごめん。昼休みんときの会話、聞いちゃったんだけどさ。…………中眞んち、本当に行くの?」


 いつもの太陽みたいな笑顔が曇っているようにみえる。


 っていうかちょっと待って。

 さっきの話を聞いてたって、いったいどこから⁉

 かなり過激な発言が飛び交っていた気がするんだけど。


「えっと、聞いちゃったって……なにを?」


 笑顔を貼りつけたまま、できるだけ平静を装って東条くんに尋ねる。


「だからっ……中眞んちに本を見せてもらいに行くって話」

「そ、それだけ?」

「それだけだけど。ひょっとして、なにか聞かれちゃマズいことでも話してた?」

「ううん、全然!」


 よかったぁ……。あのへんの話は、なんとか聞かれずに済んだみたい。


 それにしても、もっと気をつけないと、いつかわたしたちのヒミツがバレちゃうかもしれないよ。

 莉愛ちゃんと白都くんはバレても平気そうだけど、わたしはそんなに強くない。


 ……って、そういえば莉愛ちゃん、東条くんが誰かと『契約』してるって言ってたんだっけ?

 それって、東条くんはヴァンパイアの存在を知ってるってことだよね?

 だって、『契約』はお互いが同意しなくちゃいけないことになっているから。