トンッ、トンッ、トンッ、トトトト……。


 まだ図書委員の仕事の残っている白都くんと別れ、一人で校舎を出ると、わたしの足元にサッカーボールがコロコロと転がってきた。


「ごめん、西宮!」


 大きく手を振りながら、東条くんがボールを追って駆けてくる。

 ボールを拾いあげ、「えいっ!」と東条くんに向かっておもいっきり投げると、軽くジャンプして、そのボールをトンッと胸でトラップ。


「わぁ、すごーい!」


 思わずパチパチと拍手すると、「ナイスボール」って言いながら東条くんが恥ずかしそうな笑みを浮かべた。


 東条くんはサッカー部の特待生で、県外の中学から監督が引っ張ってきたんだって。

 サッカー部強豪校の星都学園にはサッカー部専用の寮があって、東条くんもその寮で暮らしているらしい。


 前から「1年男子に、イケメンで超サッカーがうまい子がいる」ってみんながウワサしてたのは知っていたけど、それが東条くんのことだったってわかったのは、今日のあのできごとのあとのこと。

 わたしが東条くんにお姫様抱っこで保健室に運ばれるところを見ていた子がいたみたいで、クラスでちょっとしたウワサになっちゃったの。

「で⁉ サッカー王子とはどうなわけ⁇」って。