「そ、そうなんだ。白都くんに彼女さんがいたなんて、全然知らなかったよー。だったら、わたしなんかとこうやって二人きりで図書室で会わない方がいいんじゃないかなぁ」

「だから、彼女じゃなくて『契約者』だってば」


 白都くんが、おもしろそうにくすりと笑う。


 ……そっか。普通は白都くんみたいに、契約者に恋愛感情なんか抱かないってことなの……かな?

 けど、先輩は白都くんに本気で恋をしているみたいだった。

 白都くんだって、さっき先輩に「愛してる」って言ってたよね?


「僕は、血を分けてもらう代わりに、夢を見させてあげてるんだよ。どう? 血の対価としては妥当だと思わない?」


 白都くんの言ってることも、間違ってないのかもしれない。

 だって、さっきの先輩、すごく幸せそうな顔をしてたから。


 真実がいつも幸せなものとは限らない。

 だったら……これもひとつの幸せの形なのかな。


 そうやってなんとか自分を納得させようとしてみたけど、人間の——それも白都くんに好意を持ってくれている人の心をもてあそんでいるみたいで、わたしの中のモヤモヤした気持ちは消えなかった。