もちろん、手当たり次第に『契約』をしてもいいわけじゃないからね？

　一人のヴァンパイアの生涯の中でたった一度だけ許されている、特別な『契約』なの。

　だから、万が一血を飲みすぎて相手が命を落としちゃったら、そのヴァンパイアはもう二度と人間の血を飲むことはできなくなっちゃうんだ。


　それに、一人の人間が、複数のヴァンパイアと同時に『契約』することもできないことになっている。

　これも、人間の命を守るために厳しく決められているの。


　あ、もちろん『契約』は絶対に誰かとしなくちゃいけないものっていうわけじゃないからね？

　だって、あの薬さえあれば、一生人間の血なんか飲まなくたって生きられるんだから。


　だったら、わたしはそんなことしない。


　だって、契約のためには、自分がヴァンパイアだってことを相手に説明しなくちゃいけないんだから。

　もしわたしがヴァンパイアだと告げた途端……南くんみたいに、会えなくなっちゃったら？

　また大事な人を失うくらいなら、わたしはヴァンパイアのヒミツは一生明かさず、一生普通の友だちでいることを選ぶ。