ヴァンパイアは、大昔から続いてきた種族だけど、現代においては減る一方。

 その減少を食い止めるためにも、人間との共存方法を考えなくてはいけなくなって。

 その一環として、あのわたしが毎朝飲んでいる薬が開発されたんだ。


 今のヴァンパイアは、人間の血を飲まなくても、あの薬さえきちんと毎朝飲んでいれば、人間と同じように暮らせるようになった。

 それに、日光に当たっても、間違ってニンニク料理を食べちゃっても、十字架に触れてしまったとしても、多少体に不調が現れることはあっても、それで塵になって消えちゃったりはしない。

 受ける影響の個人差は多少あるみたいだけど、そんなの人間だって同じじゃない?

 人間でいうところのアレルギーみたいなものだと思えば、しかたないかーって思えるレベル。


 だけど、『人間の血を飲まなくても生きられる』っていうのと、『飲みたい』っていう欲求はまた別物みたいなんだよね。

 わたしはハーフのせいか、そこまで強い欲求があるわけじゃないんだけど。


 そんなヴァンパイアの欲求を満たすために、人間の偉い人と、ヴァンパイアの間である決まりが作られたの。

 それはね、人間の血を飲むには、その人間ときちんと『契約』をしなくちゃいけないってこと。